島薗進

物語は楽しければよい。それもそうです。ところが、多くの物語は何ごとかを教えるために語られるもののようです。仏教やキリスト教などの聖典にはたくさんの物語が出てきますが、それらの中には「たとえ話」とよばれるものがあります。つまり、宗教の大事な教えを物語の形で教えているのです。こむずかしい教訓は頭に入りません。しかし物語の形にすると頭に入り、語り直されやすいのです。ストーリーに引き込まれ、共感しながら学ぶからでしょう。物語を聞いて何かを学び、成長するというのは、物語の持つ大きな働きです。